最弱リンクモデルとしてのワイブル分布の導出メモ

ワイブル分布は,ある鎖を考えたときに,鎖の最も弱い部分が壊れることで鎖全体が壊れると考えた最弱リンクモデルと見なせます.*1

このような説明がネットで検索すると見つかりますが,最弱リンクモデルの考え方がわかっても具体的に分布の形が導けない問題に当たったので,自分なりの分布の導出を書いておこうと思います.

ワイブル分布を導出してみよう

ワイブル分布の導出において,ある部品にかかる力は瞬間的にかかるのではなく,徐々に大きく負荷がかかって行くと考えます.そこで,確率密度関数PDFではなく,累積密度関数CDFに着目して導出を行います.

 

f:id:kazenoha:20180522234724p:plain

この図のように,Nこのリングからなる鎖に対して,xの力をかけることを考えます.

ここで,一つのリングが割れる確率をP(x)とします.

重要なのは,P(x)は,0からxまで徐々に大きな力をかけ続けたときの累積確率と定義するということです.

また,P(x)の形を以下のように仮定します.

\begin{align}
P(x) = 1 - \exp \left[ - \left( \frac{x}{x_0}\right)^m \right]
\end{align}

 グラフにすると以下のようになります.

f:id:kazenoha:20180523001318p:plain

f:id:kazenoha:20180523001327p:plain

xを大きくしていくと,P(x)は大きくなり,パラメータx_0,mによって,半減期のような形から,シグモイドのような形まで変化することがわかります.部品の故障に関するグラフとして適当であるような感じがします.

 

次に重要なこととして,

鎖はリングのうちどれか一つが壊れた時に破断すると仮定します.これは,「確かに」といった仮定ですよね.これを数学でモデリングすると以下のようになります.

鎖の破断する確率Q(x)は.全事象から全てのリングが壊れない時の確率を引いたものであるから

\begin{align}
Q(x) &= \mbox{(全事象)} - \mbox{(一つのリングが壊れない確率)}^N
&= 1 - (1 - P)^N
\end{align}

となります.

この式にP(x)の式を代入して

\begin{align}
Q(x) &= 1 -\exp \left[ - \left( \frac{x}{x_0}\right)^m \right]^N \\
&= 1 -\exp \left[ -N \left(  \frac{x}{x_0}\right)^m \right] \\
&= 1 -\exp \left[ - \left(  \frac{x}{x_0/\sqrt[m]{N}}\right)^m \right] \\
&= 1 -\exp \left[ - \left(  \frac{x}{n}\right)^m \right] \\
\end{align}

ここで,

\begin{align}
n = \frac{x_0}{\sqrt[m]{N}}
\end{align} 

と置きました. 

 これはワイブル分布の累積密度関数

\begin{align}
F(x) &= 1 - \exp \left[ - \left( \frac{x}{\alpha} \right)^{\beta}  \right]
\end{align}

ですね.

 

参考URL:

ワイブル分布ってなに?~高校数学でわかるワイブル分布~

http://sts-presents.com/STS01/shikujiri/wible/